中国で農業をして分かった事〜農地設立編 —                 国家権力/ゾーニング/墾田永年私財法など

まず前提として、我々上海では、現地の企業(日本への青果物を輸出する企業等が、上海の富裕層向け宅配事業を展開)とパートナーというか、我々が生産委託を受ける形で、立ち上げから関わって運営しています。
 
そこで実際に農場を立ち上げる中で感じた事で、今回は、「農地をどう作るか」に関わる事を書きたいと思います。
 
我々が展開する場所は、上海隣接の場所(上海行政府ではなく、隣の行政府)なのですが、政府が政策的に農業産業を振興しようとしているようです。
上海からほど近いにも関わらず、5ヘクタールのハウス、10ヘクタール程の露地畑が一区画であり、土木造成、ハウス建設はほぼ政府の負担で行われたようです。
 
日本でも、農地の集約化が必要と言われていますが、土地所有者がバラバラで手放さない為、全く進みません。
中国は、そういうことがガンガン進むということは言えると思います。
そういう場所で実際にやってみて、いろいろと感じた事があります。
 
まず、驚いたのが、畑の一部からごろごろと煉瓦やコンクリートの塊とか服などのゴミが出てくる事です。
 
そして、今組んでいる、運営事業者は、その土地が元々、誰が住んでいて、どこが元々どんな農地だったとか、埋め立てたとか、家を取り壊した所なのかとか知らないという状態です。
行政から、ぽんと託された感じ。
 
なので、「元々家があったらしく、取り壊し後の掃除が行き届いていないっぽい」場所からそういう物がゴロゴロ出てくる訳です。 
 
で、驚いたのが、農場の一部に建物を建てると、政府が衛星でちゃんとチェックしていて、
「農場として渡したのに、なに建物建てているんだ!」といってチェックが入ります。 (まあ、限られた面積に農業用資材庫を建てたりとかなので、問題無いのですが)
なので、これまた日本で話題の「ゾーニング(注1)」もしっかりされている訳です。
 
ガチでゾーニングされているし、畑が団地化されていくので、農業の産業化、競争力向上は、やはり進みが早いのは間違いありません。 
そして、かなり強権的だなとも思いますが、中国の行政がそういうことができるのも、経済成長の為、産業作りのために、正しい手を打って、成果を出しているからだというのは肌感覚で分かりました。
 
元々ここに住んでいた人が、いまどうしているのかなー、広い新興マンションを貰ったのかなー、といろいろ想像します。
元々住んでいた人、土地を守って来た人が、よかったと思えるようにしたいなあと思います。いい畑を作るべく頑張ります。

また、国がリーダーシップを発揮するには、やはり経済成長という結果を出し続ける事が不可欠なんだなあ(特に途上国においては)と改めて感じます。こちらの行政の人も、大変だなあ、そして優秀なんだろうなあと。

ちょっと話が変わりますが、煉瓦やコンクリ拾いをしていて(重い!大変)、思うのが、墾田永年私財法ってすごいな、ということです。
 
日本人のメンタリティーを作った、大きな要因なんだろうな、と。
自分で開墾して田畑を守ったら、それはあなたの所有物ですよ、と。
 
日本人の上の層だけでなく全体的に真面目であり、自責的なところは、こういうところに根っこがあるのではないかと。 
そして、時の権力者が、こういう判断を出来るのもすごいな、と。そっちもそっちで日本らしいなと。神輿は軽い方がいい的な、ふわっとした、変な欲が少なく懐の深いリーダーだったのだろうなあと。

この辺が日本の強さの原点な気がしますし、海外ととても違う文化だなあと改めて思いました。
 
しかし日本の農政も、墾田永年私財法に立ち返ったぐらいの深さの議論が必要かもしれません。農地解放の功罪についても、もちろん向き合う必要があるでしょう。

 
 
(注1)ゾーニングとは、農地と宅地等農地以外をしっかりと地区で区分をやりきることです。日本では農地がどんどん宅地転用されて値上がりし、農家が変な「転用待ち」したり、一部転用されたら地主みたいになっちゃって本気の専業農家が生まれにくいという問題があるので、今の農地を「これからずっと農地であり、転用は金輪際認めない!」となればいいのでは?という議論があります。(が、もちろん既得権益が強過ぎて、政治的には通らないでしょう)