「考える」を考える

 
研修の仕事を久々頂いた。
内容は、「発想力を鍛える」系。

私は、だいたい「新規事業を考えてみよう」系の研修をここ数年頂いていて、これはなんとなく「型」みたいなものが出来てきた感じがするのです。
ですが、今回、そもそも「発想力自体を鍛えよう」というのを「研修」でやるというのが、チャレンジングでもありドキドキしたのですがやってみました。
 
やってみて思ったのは、「発想力」的な物は、論理的思考力以上に後天的な鍛錬で決まるな、と実感したので、そんな事について書いてみたいと思います。
論理的思考力を単純な解析力とか、速度みたいな風に捉えると、AIに代替される領域で、人間が持っていても価値が薄くなっていくでしょう。
そういう意味では、「発想力」を逞しくするのは重要なテーマな気がします。
 
よく、「アイデアマン」(発明家)とか、クリエイティブ系の人(宣伝のコピーやデザイン系の仕事が、発想力があるイメージがあると思います。
しかし、多くの人/仕事においては、「企画」や「提案」を行う際に、どれだけ広く、深く考え、その結果、有意義で迫力のある企画、提案が出来るか?というような意味での「発想力/想像力」が重要だと思います。
あるいは、単純に、普段の会話で、「面白い」「鋭い」事が言えるか、というような事だと思います。
また、日々、いかに将来をいろんな時間軸で頭の中でシミュレーションしながら生きているか、みたいな事です。
 
そういう力は、どう鍛えられるのか? どうすると劣化するのか?について考えさせられました。
 
基本的には、世の中や自分の人生に対する態度の問題だとは思うのですが、研修的な物/考えるツールも、案外有用だなと思いました。
 
論理的思考力を上げるのに、基礎的な足腰を鍛える為には、クリティカルシンキングの問題(GMAT)をひたすらやるのは、有効だと思います。(私自身、シュウカツ前に集中して何日かやったら、コツを掴んで出来るようになった実感があります。)
 
では、「発想力/想像力」についてはどうか。
 
世の中にはいろんなツールがあります。スタンフォードでやっている6 thinking hats(極端なキャラ設定を6つやることで多面的に見れるようにするみたいなのです)とか、あと時間的な圧力をかけて、30分でなにかについてのアイデアをくそみそ合わせて100出す、とか。
これも、critical thinkingみたいに、基本的な足腰を鍛える/あんまり使った事無い頭の部位を動かし始める、的には有効かな、と感じました。
 
ちなみに、この歳になり、色々な人(の経過)を見て思うのは、こと発想力は、学歴とか、社会的な地位とかと全く比例しない、ということをハッキリ実感します。
 
むしろ、20代、30代に、そういう部位の頭を使いながら、日々生きているか、が大きく影響していると思います。
 
では、どんな環境やモードだと、そういう頭の部位は活性化され、あるいは逆に錆び付くのか。
 
キーワードは、
「主体性」
「他者/異文化への好奇心(寛容さ)」
「チャレンジを、避けるべきリスクと捉えるのでなく、刺激として楽しむ感覚」
クリティカルヒットを狙いにいくハンター魂」
的な事かなと思います。
当たり前かもしれませんが、こういう事が核だと思います。
 
以下、つらつら補足します。
 
基本的には、当たり前ですが、リスクを取ってチャレンジしている人は、自然にどんどん活性化します。シミュレーションとかしまくっていないと、すぐ立ち行かなくなる環境に身を置いているので。
逆に、安定していそうな環境で、そつなくこなしていると、空気を読む能力とかは上がるんでしょうが、発想力は塩漬けでしょう。
 
また、メンタリティー/社会に対する態度についてですが、
「ミスをしないようにする/怒られないようにする」モードだと、脳のそういう部位は萎縮し錆びていきます。一方で、基本的にそういう脳が発達しうる年齢的な限界も若いうちな感じがします。

「空気を読まず、生意気な(でも深い正論)をぶっ込む」ことを日常的にやるという生業をしているのが、最も効率的に発達すると思います。
 
私事ですが、「白装束を着て提案するしかないな」(これ通らなければ死にます/辞めますの覚悟を示す必要あるな)という局面を多々経験してきた事が、経営者などから相談してもらえるような頭を作る上で重要な経験だったなと思います。
意見を言うからには、クリティカルヒットを最短の時間でやる、という意識/モードが、私には常にあります。ただ、これは刺激中毒的なヤバさもはらむ気がするので、皆さんにお勧めする筋の話ではありませんが。

一般論に戻ります。
創業をしたり、作家になったりと、完全に孤独な存在として責任を負うというような事をすれば、当然自然に活性化すると思います。
また、「思考力は移動量に比例する」という名言を聞いた事がある気がしますが、それも頷けます。異文化に触れる事を楽しむという事は、視野が広がり思考の幅が広がるので。
 
とはいえ、多くの人は、いきなり白装束着て社長にえぐい事を直言しに行ったり、創業したり、作家になったり、海外に移住したりというのはハードルが高いと思います。
 
その際、現実的にお勧めしたいのが、自分の中で、「キャラ設定/モード」あるいは「顔/ノリ」を二つ以上持つ、という意識を持つ事です。
 
リーダーシップ鍛錬で、海外ではsituational leadershipという言葉があります。状況に応じた、キャラ設定をしましょう、というような事です。
 
想像力を逞しくする為には、「通常モード」とは別に、「やんちゃモード」を意識して切り替えられるようにする。そっちモードが発令できるように、そっちの頭も時々鍛えておく、というのが現実的にとても有用かと思います。
 
何が起きるか分からない世の中。バランスを取って生きるしかありませんが、その気になれば、頭フル回転させて、鋭い事言えるようにしておくことは、とても有用だと思います。 安定した給与が出る皆さま、知らず知らずのうちに、発想力が錆び付く状況に置かれている事が多いと思いますので、意識されても良いのではないでしょうか。
 
偉そうにすみません。私も、空気読むモードを、もうちょっと鍛えたいと思います。
 
以上