選挙戦に見る、民主主義の「意思決定プロセス」機能不全 〜 経営判断プロセスとの違い

衆院選に向けて、各党の主張が示され、マニフェスト、各メディアの発信の中で整理されようとしています。
 
それらを眺めて改めて思うのが、今の「選挙という仕組み」が、「有効な意思決定プロセス」になりにくい感じがするということです。
 
今まで、コンサルタントとして、経営者の端くれとして、意思決定をドライブする仕事をナリワイにして来ました。また、前回の都知事選には関わらさせて頂きました。
 
そんな経験から学んだ、有効なな意思決定/判断を再現性を持って継続できるためのプロセスとして大切なのは以下のような事です
 
ー 俯瞰的・網羅的視点に立った上で、最大の争点(みんなが右と思う事でなく、右、左に半々に分かれるような事、トレードオフな事且つ重要な事)を選別して、逃げずに、そこに論点を絞って判断する覚悟を決める
ー その論点においては、合理的な論拠に基づくディベートを経て、判断をする
ー また、そもそも論として、理念・想い・ミッション・ビジョンを明らかにし、常に問い直して、それに準拠して判断する
 
(ちなみに、短期的にはこういうのをすっ飛ばして、超優秀なリーダーの専制君主制が圧倒的に有効なのですが、サステイナビリティーに問題があるので、それは置いておきます)

政治家/メディアが、本気でこの国を経営すると決意していたならば、上記のような視点に立った物の考え方をすると思うのです。
 
しかし、現状の選挙戦。実際問題、どういう視点に立って、論点選択/主張がなされているか。
 
私には、「多くの人が反対しなさそう、且つ、なるべく他の政党と差別化できそうな主張」が何か、という視点で、各党が選挙に勝つ為だけに、「バカな国民」対策をいろいろ探しているような気がしてならないのです。

例えば、「進むか戻るか」vs「政治を取り戻す」みたいな抽象論は、大企業のダメ経営者と同じぐらい抽象的。
あるいは、原発は論点とされているようだから各党利権に近いところは利権守りつつ国民に批判されないように玉虫色、利権に遠いところは主婦にキャッチーに(具体的な実行プランを真摯に見る事なく)、という視点でそれぞれすれ違いながら論を組んでいる気がします。具体的に「右か左か」いつ、どの原発をどうするか(なぜか)に迫っていない。
中央道で事故が起きればまた、「インフラ・国民の命を守ります」みたいな空疎な事を皆言って、どう具体的にコストとのトレードオフの判断をしていくのか議論が進む事はないでしょう
 
俯瞰的に見て、最大の争点を選別する事が大切と書きました。
今、日本が抱える最大の争点は何か。
 
例えば、財政、社会保障
あるいは、キャッチアップエコノミーから成熟国経済/本当の自由な国家への転換という国家戦略のグランドデザイン。
 
こんなところが、本当の論点でしょう。
 
この論点は、どぎつい判断を迫られます。
向こう20年で歳入、歳出をどの程度にすべきなのか。この1点に絞って、どう考えるのか。
少年マンガ条例なんて話しもありますが、どのぐらい抜本的に行政主導/規制を剥がして、クリエイティビティーのある国民にしていくのか。(あるいは、いっそ農本主義/鎖国主義的方向に行くのか)。それに伴って、国、都道府県、市町村の役割/税配分をどうするのか。
本当に、国を背負う覚悟があるなら、ここらについてイメージしないでは居られないはずですが、どれだけの候補者が頭の中に数字を持っているのでしょうか。
 
会社は経営判断の質が下がると、「マーケットの判断」によって、破綻し、淘汰されます。
国の政治/行政の判断の質が低くても、なかなか目に見えて淘汰されないので、健全化は遅いですが、幸か不幸か、似たような「マーケットの判断」はじわじわ効いています。 具体的には、優れた企業/個人は日本から海外にどんどん軸足を移しています。 もう、猶予はないのです。
 
これは、政治家の資質の問題/政治家を批判すればいい問題ではありません。
改めて、国の政治のレベルは国民のレベルだな、とも思います。

 
この選挙で、一人でも多くの、「俺は国の為にこれがやりたい(自分の名誉が欲しい、のではなくて)」という人が通ることを願いますし、立候補者個々人がコミットメントを固めることを望みます。
また、国民側/マスコミ側も候補者の抽象的ふわふわした言葉を許さず、「具体的に、どう、トレードオフを判断するのか?」を示させるような民度に上がることを願います。

あ、ちなみに、今回、こういう「判断力」的な次元ではなく、人間的に全然ダメだろう、、、という次元でアウトにしか見えない人が多く「キーマン」になっていたりするので、それはすこし冷静になってその人の動画を見て直感を働かしたり、wikiなどでその人の沿革をざっと見て、その基礎にありそうなことを類推すれば、わかることと思います、というのを付記しておきます。
 
 
しかし、個人として、選挙で一票入れるのが難しい選挙ですね、、、
柳井正とかぐらいしか思いつかないけど、死票入れてもしょうがないし、、、
いっそのこと今回投票率がめちゃくちゃ低くなるというのも、今後の変化を促すことに繋がるのかもしれませんね

ひとまず、「町・村」単位、顔が見える範囲では、いろいろなことが有効に決まる/進む実感があるので、そういうフィールドで当面頑張ります