都知事選を、歴史の流れから捉えてみた: 本質的論点「小日本主義」vs 「大日本主義」と選挙戦術と  

よく知っている人からは当たり前の内容かもしれないし、素人が書くので素人臭いところもあるかもしれませんが、都知事選について、ちょっと歴史的な事も踏まえて僕なりに捉えている事を書いてみたいと思います。
 
というのは、大切な選挙なのに、いつもくだらないネガティブキャンペーンだったり、ふわっとしたイメージで論点明確にならない選挙になってしまう、あるいは極小化された論点に焦点が当たりすぎるのがとても残念に思いますので。

まず、都知事選挙は、日本においてとても重要な選挙だと思います。その理由を書きます。
 
日本は、戦前なら大政翼賛会、戦後なら自由党民主党保守合同55年体制)と、国政レベルで二大政党制が実質的に行われきませんでした。保守の中で、どの方向性をとるかというのは、自民党内で決まらざるを得ず、選挙で争われにくい。
 
野党は、本当は主張がバラバラなのに、選挙で反自民でまとまってたまに政権をとっても、内実まとまっていないので、うまく政権運営が出来ない、という状況でずっと来た訳です。
良くない状況/政治が健全になりにくい体制がずっとある、と思います。
 
都知事選は、首長選の最高峰で、直接トップを選べるので、「党」というのとは、ちょっと距離をおいて(推薦に留まる)、日本がどういう方向性で進むべきか、が問える選挙だと思うのです。
 
では、日本の政治の最大の論点とは何か。
 
それは、「大日本主義」か「小日本主義」か、ということであったり、基本保守の中でも「タカ派」「ハト派(リベラル)」というところです。
 
ちょっと昔の話になりますが、それが分かりやすい形で提示されたのが、「石橋湛山 vs 岸信介」(1965) のような所だと思います。
 
批判もありましょうが、ざっくり言うと以下のような感じと思います

タカ派
外交:アメリカと近い。靖国は参拝する。軍備化を進める
財政:積極出動する
分権:中央集権
ルーツ:官僚出身が多い
支持団体:宗教含め、ガチガチの固定票含め政治力確保
 
ハト派/リベラル」
外交:隣国全般と融和する。靖国とは距離を置く。護憲
財政:肥大化させない
分権:分権推進
ルーツ:ジャーナリスト、民間出身が多い
支援団体:ガチガチの固定票とは距離をおき、個人の信念重視
 
これこそが、日本の政治の主な論点だと思います。そして、それが有意義な形で争える可能性があるのが、国政選挙より都知事選な感じがします。
 
一方で、自民党、その選挙対策本部の視点から見るとどうなるか。
 
選挙に勝つためには、自民党公認/推薦に組織票を集め、一方で、対抗候補が票を割れば勝てる訳です。極論すれば、勝たせる公認/推薦候補は、個人としてはそんなに強くなく、従順な方がいい。
一方で、対抗候補が浮動票をうまく割る形を作る事こそが、選挙戦術の再重要ポイントであったりする訳です。
 
これまで、この形がしっかり作られ、公示日には自民党推薦候補の勝ちが決まっている、というような都知事選が多かった訳ですが、今回一応、自民党が割れて、野党が統一というところまでは行きました。
 
しかし、状況的に、パッと見、小池さんが改革っぽく見えるようにしているため、浮動票の中で、「改革」を求める人の票が、うまいこと小池さんと鳥越さんで割れるような構造ができつつあります。
 
つまり、なんとなく、「安定運営」の増田さん vs  「改革」の小池さん/鳥越さんというような感じになってきていますし、これが自民党選挙戦術的には狙いでしょう。
 
ただ、上記の、「本質的な論点」での主張で言えば、本当は、増田さん/小池さん vs 鳥越さん だと思います。 
(そういう意味では、鳥越さんの第一声に、後ろに小沢さんが居るのは非常に違和感があったりしますけれど、野党統一の前にはしょうがなかったんでしょう、、、)
 
アメリカもトランプさんが出てきたり、外交の曲がり角にある中、また日本も右肩上がりが終わってだいぶ経っている現在。
 
今回の都知事選で、日本がどういう方向性を定めるべきか、もう一度「本質的論点」を捉えて、国民、都民が考え、直接考えを選挙で示す事が出来るような、そんな有意義な選挙になって欲しいし、それが一つの契機となって、今後「本質的論点」が国政選挙でも争われるような、そんな政治体制になって行くことを望みます。
 
草葉の陰で、石橋湛山さんがどんな風に思っているか、そんなことに思いを馳せながら投票する人、今回何人ぐらい居るのでしょうか、なんてことをふと思い、書いてみました