続農政について ー 農業競争力強化に効く事、案外効かない事 5つ

農政/日本の農業強化で重要だと思う事、書きました
結構、世の中で言われている事と全然外れています

1、 農協を機能させるなら、「全国統合化」の方向が有効
 
2、 強い農家作りと農協改革や企業参入は、あまり関係ない
 
3、 「6次産業化」は農業強化ではマイナーイシュー
 
4、 関税や生産調整は、実は一理あるので重要論点
 
5、 機能測定やセンシング技術などへの補助金は有効かも
 
以下、より詳しく。
 
1、 農協を機能させるなら、「全国統合化」の方向性が有効
 
これだけ物流が発展し、消費者も旬なものを求めるのでなく、通年全部求める中で、
「県/地域ごと」の卸など、価格決定権を持てず弱い。
僕が農協のオーナーなら、全国統一化&扱い作物ごと軸での組織再編。
世界で強い、DOLE、ゼスプリなどを見ても明らか。
例えばゼスプリは、「ニュージーランドのものいろいろ輸出します」ではなく、
キウィ、リンゴを通年世界に提供します という動きで、韓国などでの生産を強化していると聞きます
一方、日本は海外の小売りで、一部の高級スーパーで狭い「高級リンゴ棚」を県の間で供給バッティングし
ビジネスにならないみたいなこと繰り返しています。
日本も、例えばまず「全日本りんご生産者組合」とか出来ると、少し戦えるようになると思うのですが

2、 農協改革や企業参入は、強い農家作りにあまり関係ない/直接は繋がらない
 
農協改革/企業参入が話題で、これらが強い農業に繋がる的な語られかたがされますが、全然ピンと来ないというお話。
 
そもそも強い農家と農協は接点が少ない(自分で売るし、自分で肥料等直接調達するし)。
なので、簡単に言えば「どうでもいい」関係。農協をどうしようと強い農家への直接的な影響は少ない。
 
一方の「企業参入」。
ちょっと調べれば、企業の農業参入は失敗の歴史。死屍累々。
資本を持てるようになったから、企業が参入して劇的に経営効率が上がるなんて事はないんです
これまで、日本が世界に誇る、一流メーカー数社は生産をやろうとして、基本的に全て失敗、撤退。
大手小売り流通も、農業自体を本業として本気でやっているとは言えない状況で「ポーズ/広報活動」と見た方が正しい状況が多い
 
3、 「6次産業化」は農業強化のマイナーイシュー
 
6次産業化というのは、加工など統合度を高める事。
ただ、通常農業は「加工などされたくない」と思って作るもの。
おいしい野菜、果物を作って、それをそのまま食べて欲しい訳です。
8兆円の農業生産額のうち、加工用に回るのなんて1兆〜2兆ではないでしょうか?
そこをうんぬんするよりも、メインである青果のまま流通する部分を、より「強く」することが本筋。
2次、3次産業側から見ても本気で1次産業を取り込むなんてナンセンス。
カゴメが使うトマトの過半を自分で作ると宣言するか、イオンが自分で過半の野菜を作ると宣言するか、そんな経営判断絶対しないし、経営者としてすべきでない。
出来上がってから市場に並んだ農産物を、比べて買い叩いた方が経営効率がいいし、1次と2次・3次では、企業経営のノリや時間軸が違いすぎて同じ企業でそうそうやれることではない。
でっかい加工向けキャベツをつくって、外食千切りキャベツ用農家が効率的経営を達成、なんてこと、大きな話ではないし、そもそもそんなにうまくいかなさそう。どうせキャベツをスーパー向けに作ったって「B品」が出て加工用に回るんだから。

4、 関税や生産調整は、実は一理あるので重要 

TPPがらみの関税や減反などは、実はよく考えなければならないこと。
そもそも日本国内で生産する農業が、本当に国際的競争力を持てるかというと、、、、疑問。
もし、そうなれば関税、減反撤廃すればいいけど、いまの労働者の環境等ではかなり疑問なのが現実。
 
競争力無い前提でも自給率をある程度保とうとするのであれば、「歪み」や「統制」が不可欠。
最も直截的で分かりやすいのは、関税かけて国内のを守ること。
同時に、守られてるなら作りすぎて捨てるなっていう枠を設けることは、実は理にかなっていたりします。 
ここは、しっかりした議論が必要だと思うし、ちゃんと現実を直視しなければならないと思う。
厳しい判断がいずれにせよ必要な所。


5、 機能測定やセンシング技術などへの補助金は有効かも
 
農産物が結構余っていたり、「儲からない構造」が問題な中で、
競争力の為に最重要な事は、「費用対品質の高い農産物を作る技術/能力」を作ること。 
 
費用面での競争力が日本は決定的に無いのをどうするか(労働者を入れるか、海外進出すべき)。 
また、品質も単に甘く柔らかいということに留めず、どう高めて行くか。
このあたりの論点が本質的だと思います。
 
「費用対品質」を上げる為の技術向上は、消費者の為にもなるので、公共性があると思う。
例えば、「健康になる」という機能について安く測定出来るための機械(抗酸化値とか)とか、
あるいは、労働効率を上げる為のセンシング技術(例えば田んぼの水位、水温をリアルタイムで安く確認出来るなど)は、日本発でリーダーシップがとれるよう国も注力してもいいかも。

世界に日本品質ブランド発信/農業機器販売という形に繋がるのでは?