「博多行き」決裁と「企業の幹部候補育成における既得権益化ジレンマ」について

サシコさんが、「博多行き」との決裁となった由。
 
若干の無理矢理感は否めないが、これに乗っかって、起業の幹部候補選抜プロセスにおけるジレンマとその対策について考える。
 
秋元さんは、こういうふうに悩んだはずだ。
 
「組織としては、ルールを決めた以上、また過去にルールに従って辞めさせた人間がいる以上辞めさすべきだ。
 
 しかし、サシコには、番組に出させるなど既に大きく投資をしているので外したらロスがとても大きい、サシコ関連の取引先にも迷惑がかかる、どうするか。」
 
結果、経営者としてバランスを取る判断をし、「左遷」することで組織のディシプリンを守りつつ、サシコさん関連の投資回収はできる道を模索した。
 
そんな風に見受けられます。
 
最近、企業の次世代経営者作り、特に 幹部候補を選抜して集中投資する といったことに関わらさせて頂いているのですが、その際ありがちなピットフォールが、
 
「この人材には、沢山投資したんだから(あるいは、偉いさんが選抜時にお墨付きを与えて選んだんだから)、絶対幹部になってもらわないと困る」的な雰囲気が出てしまって、逆に甘えの構造が出来る事です。
 
それに対する対策はいろいろありますが、やはり最も有効なのは、
 
「 客観的に、同じ土俵で外(お客様/従業員)で勝負をして、勝った奴が幹部になり、負けた奴はなれない 」
という場を作る事でしょう。
 
社外取締役による指名委員会や、外部人材評価会社の活用とかも難しいし、
「(出向、海外、留学等)厳しい環境を経験させる」というプログラムを入れても、そこで成果が出たかダメかの基準が難しい。
選抜するプールを必要な幹部数の10倍ぐらい確保して常に落として行くのもコストがかかるし、候補者へ重要な経験をさせる機会が分散してしまいます
 
GE、ミスミなどなどがうまくいっているのは、やはり「同じ舞台、同じ評価基準」という感じで社内競争に幹部候補が本気になるし、その結果が客観的に見えやすいからでしょう。
 
そういう意味では、AKBには総選挙という客観的な評価システムが既にインストールされており、だからこそ客観的に成果を出しているサシコが クビ ではなく左遷であるということがファン社会にも受け入れられている感じになっている とも言えるのではないでしょうか?
 
更に、この際 AKBを経営視点で考察する系のネタを書き続けます。
 
AKBといえば、あっちゃんが「卒業」する訳ですが、経営的には、「卒業システム」ができるかどうかが、AKBが産業化できるか、あるいは今のメンバーと秋元氏の老化とともに廃れる「業態寿命を持った1業態」に止まるかの分かれ道となるでしょう。
 
いわゆる「アップ or  アウト」と本質的に同じと思いますが、 「ピンで行けるのは 昇進という形で卒業。 一定期間機会を与えたけれど、成果を出せなかったものは、クビという形で卒業」。 このディシプリンを効かせられるかこそ、ゴーイングコンサーンで見た場合のAKBのポイントでしょう。
 
更に言えば、秋元氏の属人的なリーダーシップをどう、運営組織の能力に落とし込んで行くか。
 
例えば、「サシコは秋元氏がクビにしなかったから、復活活躍できた。だからサシコは秋元氏に頭が上がらない」とか、
「結局 総選挙といったって、その前に秋元さんが、どんなテレビの仕事をどのメンバーにやらせるか、秋元さんの差配次第で順位決まるよね」 とか、そういう事態になってくると、AKBは秋元氏と共に繁栄、衰退するでしょうし(西武やダイエーのように)
 
逆に、出演機会の提供のされ方、評価のされ方、卒業のさせられ方 に一定の組織的客観性が与えられれば、より永続的なモデルになると思います。 「身近(そう)なアイドル」というコンセプト自体は今の時代のニーズにマッチしていると思うので。
 
企業も全く同じで、「この人が引き上げてくれたから社長になれた」 的な事が続く限り、相談役とかがはびこって停滞が続くでしょうね。
 
AKBは経営を考える時に、面白いもんです。