新事業担当者向け講座2          新規事業を考える際の既存事業/コアの活用可能性評価のポイント/pit fall

【導入/背景】

新規事業の成功の確率や、「なぜ我が社がやるのか?」の合理性の根拠として、「自社の強みが活かせるかどうか?」が通常問われる。

これが、当たり前のように見えて、なにをもって本当に「活かせ」そうなのか、どう蓋然性を検討するのかは、かなり奥深い。
そして、下手をすると、ものは言いようだったりするので、割と「表面的な理由付けが出来ちゃう」ためGoとなったはいいものの、実際に事業開発するに当たっては、強みが活かせない事は多い。
そういう事業開発は、無理くり「強みを活かす」幻想に囚われて、顧客目線/現場感からは離れた「社内向け営業」的な活動に堕落しかねないポイントでもある。そうなったら担当者は最悪である。

そのような不幸を避ける為にも、もちろん新規事業開発の成功確率を上げる為にも、「自社の強みは活かせるのか?」は、深く深く、自社、対象市場機会を考察すべき事柄である

 

【基本的、一般的な考え方のおさらい】

 

まず、一般論として通説を二つ程おさらいしたい。

一つは、非常に古典的な、コンサル会社だと最初に叩き込まれる概念である、”business definition”(凄く一般的な名称。直訳は「事業の定義」だが、後述のコンセプトを意味する)。

もう一つは、「コアの定義」要は、自社の強みの定義をまずしっかりして、それを何に活かせるかという手順をちゃんと踏もう。という考え方。

 

“Business definition”

この概念は、コンサル会社で最初に習う(会社によるかも)が、今この一般的な言葉で検索しても、これから説明する概念のページが出て来ない。

非常に簡単なコンセプトであるが、極めて有用だと僕は考えていて、この視点でうんうん唸りながら考えている事が多かった。

基本的には、「二つのビジネスの近さを定性的に評価する」事を目的としており、本業に対して、複数の「新規事業候補」が、どのぐらい近いか遠いか議論するのに、最初に活用すべき視点である。

2x2マトリックスで、縦横どっちでもいいと思うが、「顧客の重複度」横軸に、「コストシナジー」をとる。

本業と、お客さんがどれだけ一緒か、本業があるから、ゼロからやるのに比べてかからなくて済むコストの比率は、その事業にかかるコストに対して何割ぐらいか。

これは、新規事業戦略で攻めの候補優先順位付けにも使えるが、リストラ時に既存ポートフォリオの中で切り出すべきは何かを検討するのにも同様に使える。

相対的なマッピングになるので、定性的ではある(何をもって“大きい”か“小さい”かを、相対的に決めるしか無い)のではあるが、“政治的”ではなく、“定性的”な議論が出来易い。

もうちょっと一般的すぎない良い名前があれば良いのだが、、、

 

もう一つは、「コアの定義」

先ほどの”business definition”では、「顧客の重複度」「コストシナジー」と、かなり限定的に(その方が議論がぶれないから)本業とのシナジーを計測するツールとなっています。

ただ、世の中のスピードが上がり、機動的に動けばいろいろ出来るチャンスがある中で、シナジーの出発点がその二つだけではあまりに限定的すぎるだろう、というのが一つの背景です。

また、事業を複数抱えるような会社の場合、「うちの突き詰めた強みの源泉ってなんだっけ?」というような状況もあります。

もっとどぎつい事を言えば、一昔前は明確な強みがあったけど、今明確に誇れる強みなんて、社外を納得させられるようなレベルではなかなか見当たらないというステージの会社も多いでしょう。

そんな時に有用なのが、「自社のコア」を改めて見つめ直し、コンセンサスを形成して、「この強みの上に立脚しよう」というアプローチです。

では、「コア」の再認識というのは具体的にどういう事か。

Nikeの例が多くの人に分かり易いと思います。

バスケットシューズを作っていたナイキ(だいぶ長い時間軸の話になります。80年代ぐらい)。なぜ、ゴルフクラブまで作れたのでしょうか?

いろんな事はありましょうが、一言でいえば、「スーパーヒーローをマーケティングに活用する」という“ケイパビリティー”こそが、ナイキのコアと定義で来たからです。

マイケルジョーダンにバスケのマーケティングを破格のオファーでしてもらって収益を納める事に成功したナイキは、バスケだけでなく、ゴルフ、テニス、サッカーと、「この道の通り方知っている」とばかり、各スポーツのスーパースターとの連動を成功させる事で、靴だけじゃない、バスケだけじゃない、ナイキ帝国を築いたのだと思います。2020年に1990年代の例ですませんw

“ケイパビリティー”は、なかなか自社では気付きにくかったりする、他社に対する優位性ですが、これをちゃんと発見、コアとして社内で定義づけてあげる事で、チャレンジの方向性、その際頼る社内資産が明確化するという効果があります

 

 

【具体運用上のポイント】

上記のような、本業との距離感、自社の強みの探索をする上での実務的なポイント/失敗し易い所を書きます

 

  • 「定性的」のdiscipline(強弁か論理的かのライン)死守

    政治忖度を廃し、定性(≒この数字ならこのランクとちゃんと定義)、どこまでが「定性的であるか」の倫理を守る事です。
    business definitionをマップするときも、各担当者他は、自分の関係する事業が、本業から近いと強弁するでしょう。
    その時に、「すいません、この一目盛りは、顧客重複率10%でやってます」と、曖昧さを廃し、disciplineを守る事が生命線です。政治闘争でなくクールな議論をする為には

  • 現在だけでなく、「未来的に定義する」事が出来るし、すべき

    新規事業創出は簡単ではありません。意欲が有り、一人の頭抜けた担当者が突破するというような事もあります。
    また、新規事業は「尖っている」(多くの人が失敗するだろうと思うのを突破する)必要が「基本的に」あります。

    その場合、上記視点を「今日的に」見ただけでは、煮詰まってしまう事も多いでしょう。
    とても大切なのは、「未来的に」今はしっかり強みとは言えないが、会社のDNAや世の中の流れを踏まえて、5年後とかの将来的に、「うちの会社の強みはこれだ!」と言えそうなもの。
    ちょっとずらして(安直なみんなが頷くことではなく)定義する所が味噌だったりします。
    例えば、僕が関わったワタミは、「居酒屋」の会社でしたが、安直に「フードビジネスのケイパビリティーがある会社」ではなく、「お客様に真心からサービスを提供し、お客様を喜ばせる事が私の喜び」という集団である、という定義の下、介護、弁当宅配と事業ポートフォリオを進化させました。
    この辺の「ずらし」「未来志向」がミソなんです
  • ステップで考える。PoA(Point of arrival)と、「最初の一歩」の並行検討

    新規事業を最初から、大きなスケールで考えるのは無理がある事が多いでしょう。
    なので、長期(5−20年とか)で、「どこへ行きたいのか」をじっくり考え、「併せて」まずなにをやるかを考える。
    この「併せて」というのがミソで、遠い将来だけだと絵空事になりがちだし、目先の事だけだと場当たり的になりがちです。
    遠い将来の夢と、目先で来そうな事の同時シミュレーション/妄想が、大切です。
    目先やる事の期待できる規模は限定的でも、将来それが、「束」としてスケールしていけそうな事をやる。
    いずれにせよ、「イメージ出来ている事以上の現実は無い」と肝に命じ、「本当にワクワクする将来の夢」に繋がる、第一歩としての、「まず今年これやるぞ」と定義する事が大切でしょう

    【終わりに】

    新規事業創出は、本当にワクワクするので楽しいし、いろんなドラマが生まれます。未知の海に漕ぎ出すのは大変だし、社内で後ろから撃たれたりしないように、社内コミュニケーションも欠かせないでしょう。
    でも、未来を作る仕事、これ以上に面白い事は無いので、勇気を持って挑み、考えを尽くして行きましょう!

新規事業担当者向け講座1:         積み上がり型ビジネス(サブスクなど)の事業価値評価は、顧客生涯価値(”CLV” life time value)をベースにまず考えよう

【導入/背景】

一般的な事業会社にて、新事業を検討する際、これまで通り何年間かの収支計画を立て、NPVなり 投資回収期間なり IRRであったりというような、慣れ親しんだ収支計画をベースに、計画側も、審査側も見る事がまだまだ多い気がします。

一方で、メーカーはサービス化、サービス業もサブスク化等が重要なテーマになって来る中で、そのような「複数年収支計画系」は、もちろん必要(規模感を見たりとか)ではあるのですが、もっとまずやるべき視点が有ると思います。

 

これから書く“CLV”は、いわゆるITサービス(オンラインメディアでも、スマホゲームでも、マッチングアプリでも、B向けの例えば名刺アプリとかでも何でも)では当たり前に「最重要」な視点で、有効なので、投資側のVCはおろか、ベンチャーへ融資する銀行もこの視点で見ていると思います。

いわゆる日本の大企業には、「これまでの見方と違う」という事もあり、定着していないどころか、あまり認知/理解もされていない事が多いように見受けられます。

是非、多くの新規事業担当者、及び審査する経営企画部/経理部が当たり前に早く使いこなす事の一助になればと思いブログに書きました。

 

【LTVの基本的な考え方/使い方】

顧客生涯価値(Customer lifetime value)とは、簡単に言えば、顧客一人当たりのNPVです。

算出式の基本は、

A: 単位期間(月か年か)あたりの顧客一人が落としてくれる粗利

B: 顧客の継続利用期間の期待値

C: 顧客を獲得するのにかかるワンオフのコスト

という事で、 A * B >> Cかどうか、というのが基本的な視点になります。


(A * B ) - Cが、単位顧客LTVであり(細かく言うと時間軸で割引率かけると尚良し)、こいつに顧客数をかけてやれば、「それぞれのときの事業価値(PLではなく)」となります。

この考え方の有用性は、「顧客が増えれば増える程獲得コストが嵩むが、中期で見れば魅力的である」事業を正しく、“リアルタイムで”評価出来る事です。積み上がり型のビジネスは、一般に最初に、顧客獲得にコストがかかり、それを顧客が離脱するまでに回収し、収益を出す という構造をしています。一方で、顧客獲得コスト、顧客の滞在期間は、状況によってリアルタイムで変化し、且つ事業運営上の最重要KPIでもあります。

新規事業は、機動性が重要で、challenge & learn の姿勢/ pivotしながら進めるという事が大切ですが、それが闇雲にされているのではなく、この指標を下に語られる事で、運営(推進)側/管理側が有意義な会話が(2年後売上利益は上がるのか?とかやっているよりずっと)できるようになります。

 

PDCA(改善/品質管理のコンセプト)というより、OODAループ(判断の為の基本コンセプト)の思想の視点と言えるのではないでしょうか

 

【実際に使う際のポイント】

  • 「顧客属性をいくつか設定する事で精度が飛躍的に上がる」

    顧客のタイプによって、上記A,B,Cのパラメータが大きく変わる事はよくある、というかだいたいの場合そうです。
    あまり細かいメッシュにすると訳分からなくなりますが、最初から3つとか(うちどこかは狙わないとかでも良し)以上設定する事をお勧めします。その方が顧客像がリアルに描けて、事業推進自体の質も上がるでしょう
    これは、CLVに限らず顧客セグメント設定するとき共通ですが、単なるデモグラフィー(年齢性別など)で分けるよりは、顧客の動き方や価値感のタイプによって分ける事が、精度を上げます

  • 「理解してくれない人に説明するときのコツ」

    まず"NPV"自体の概念や、Marketcapは基本EVと同じになるはずだ というような基本的な事が分かっていない人には、将来利益の現在価値という概念から説明しましょう
    シニアで、なんとなく新しいモノに抵抗する人には、「富山の薬売りビジネス」の例えなどから入ると、耳を傾け易いかもしれません。
    世の中のサブスク(アマゾンプライムなりNexflixなり)はもちろん、携帯電話キャリア事業や、プリンター事業(インクで儲ける)など、多くのビジネスが、この考え方を基軸として運営されている事を、共通認識として持つ事が、議論を始める前に必要でしょう

  • 「未来の事業のシミュレーション関して、集中すべきポイント」

    先ほどの、A,B,Cは、それぞれ関係し合っています。
    粗利が高いお客さんこそ、獲得にお金がかかったり。獲得が簡単な顧客程、継続率が悪かったり。モデルを動的に組んで、シナリオを検討すべきです。
    また、A顧客ごとの単位期間粗利ですが、粗利は「収入−経費」ですが、経費はサービス品質に直結します。サービス品質の高低によって、継続率も変わりますし、そもそもチャージ出来る収入=月額(年額)単価も変わるでしょう。このあたりがシミュレーションのポイントです。
    これらの数字についての確からしさについての議論が出来れば、健全な議論が出来ている状態だと思います

  • 「併せて押さえておきたい視点」

    この考え方に親和性のある、併せて理解しておきたい視点/キーワードが有るので、最後に書いておきます。

    まず、「顧客離脱前触れ把握&挽回戦略」という視点です。

    書いて来た通り、「継続利用期間(期待値)」は、このCLV算出上の肝であり、実際の事業運営上も最重要KPIです。
    この数字をなるべく上げる為に経営上重要なのが、「離脱しそうなお客様を前触れで認識し、挽回策を打てるか」というタイプの仕事です
    例えば、「2ヶ月か利用していないと、次の月離脱する可能性が40%(顧客全体では数%なのに)」というような事が分かれば、そのような顧客に、特別な特典を付与してみる、など打ち手が見えて来るはずです

    次に、「フリーミアム戦略」です
    簡単にだけ紹介すると、「無料で利用頂き、とにかく利用者を増やす。そこから、一部のお客様だけに“特典”を提供し、その特典に課金する」という考え方です。アマゾンはじめ、cookpad, tabelog などみんなやってますよね。 顧客増分コスト(顧客が増えるのに従って追加的にかかる運営費)がマージナルな場合は、この戦略が基本になると思います。
    この戦略をとる場合は、顧客がフリーと有料の二段階となり、「移行率」の想定が重要論点となります。

 

以上、結構浸透していると思った事が、案外大企業に浸透していないので書いてみました。 当たり前の事じゃんという方、時間を使わせすいません、、、

「考える」を考える

 
研修の仕事を久々頂いた。
内容は、「発想力を鍛える」系。

私は、だいたい「新規事業を考えてみよう」系の研修をここ数年頂いていて、これはなんとなく「型」みたいなものが出来てきた感じがするのです。
ですが、今回、そもそも「発想力自体を鍛えよう」というのを「研修」でやるというのが、チャレンジングでもありドキドキしたのですがやってみました。
 
やってみて思ったのは、「発想力」的な物は、論理的思考力以上に後天的な鍛錬で決まるな、と実感したので、そんな事について書いてみたいと思います。
論理的思考力を単純な解析力とか、速度みたいな風に捉えると、AIに代替される領域で、人間が持っていても価値が薄くなっていくでしょう。
そういう意味では、「発想力」を逞しくするのは重要なテーマな気がします。
 
よく、「アイデアマン」(発明家)とか、クリエイティブ系の人(宣伝のコピーやデザイン系の仕事が、発想力があるイメージがあると思います。
しかし、多くの人/仕事においては、「企画」や「提案」を行う際に、どれだけ広く、深く考え、その結果、有意義で迫力のある企画、提案が出来るか?というような意味での「発想力/想像力」が重要だと思います。
あるいは、単純に、普段の会話で、「面白い」「鋭い」事が言えるか、というような事だと思います。
また、日々、いかに将来をいろんな時間軸で頭の中でシミュレーションしながら生きているか、みたいな事です。
 
そういう力は、どう鍛えられるのか? どうすると劣化するのか?について考えさせられました。
 
基本的には、世の中や自分の人生に対する態度の問題だとは思うのですが、研修的な物/考えるツールも、案外有用だなと思いました。
 
論理的思考力を上げるのに、基礎的な足腰を鍛える為には、クリティカルシンキングの問題(GMAT)をひたすらやるのは、有効だと思います。(私自身、シュウカツ前に集中して何日かやったら、コツを掴んで出来るようになった実感があります。)
 
では、「発想力/想像力」についてはどうか。
 
世の中にはいろんなツールがあります。スタンフォードでやっている6 thinking hats(極端なキャラ設定を6つやることで多面的に見れるようにするみたいなのです)とか、あと時間的な圧力をかけて、30分でなにかについてのアイデアをくそみそ合わせて100出す、とか。
これも、critical thinkingみたいに、基本的な足腰を鍛える/あんまり使った事無い頭の部位を動かし始める、的には有効かな、と感じました。
 
ちなみに、この歳になり、色々な人(の経過)を見て思うのは、こと発想力は、学歴とか、社会的な地位とかと全く比例しない、ということをハッキリ実感します。
 
むしろ、20代、30代に、そういう部位の頭を使いながら、日々生きているか、が大きく影響していると思います。
 
では、どんな環境やモードだと、そういう頭の部位は活性化され、あるいは逆に錆び付くのか。
 
キーワードは、
「主体性」
「他者/異文化への好奇心(寛容さ)」
「チャレンジを、避けるべきリスクと捉えるのでなく、刺激として楽しむ感覚」
クリティカルヒットを狙いにいくハンター魂」
的な事かなと思います。
当たり前かもしれませんが、こういう事が核だと思います。
 
以下、つらつら補足します。
 
基本的には、当たり前ですが、リスクを取ってチャレンジしている人は、自然にどんどん活性化します。シミュレーションとかしまくっていないと、すぐ立ち行かなくなる環境に身を置いているので。
逆に、安定していそうな環境で、そつなくこなしていると、空気を読む能力とかは上がるんでしょうが、発想力は塩漬けでしょう。
 
また、メンタリティー/社会に対する態度についてですが、
「ミスをしないようにする/怒られないようにする」モードだと、脳のそういう部位は萎縮し錆びていきます。一方で、基本的にそういう脳が発達しうる年齢的な限界も若いうちな感じがします。

「空気を読まず、生意気な(でも深い正論)をぶっ込む」ことを日常的にやるという生業をしているのが、最も効率的に発達すると思います。
 
私事ですが、「白装束を着て提案するしかないな」(これ通らなければ死にます/辞めますの覚悟を示す必要あるな)という局面を多々経験してきた事が、経営者などから相談してもらえるような頭を作る上で重要な経験だったなと思います。
意見を言うからには、クリティカルヒットを最短の時間でやる、という意識/モードが、私には常にあります。ただ、これは刺激中毒的なヤバさもはらむ気がするので、皆さんにお勧めする筋の話ではありませんが。

一般論に戻ります。
創業をしたり、作家になったりと、完全に孤独な存在として責任を負うというような事をすれば、当然自然に活性化すると思います。
また、「思考力は移動量に比例する」という名言を聞いた事がある気がしますが、それも頷けます。異文化に触れる事を楽しむという事は、視野が広がり思考の幅が広がるので。
 
とはいえ、多くの人は、いきなり白装束着て社長にえぐい事を直言しに行ったり、創業したり、作家になったり、海外に移住したりというのはハードルが高いと思います。
 
その際、現実的にお勧めしたいのが、自分の中で、「キャラ設定/モード」あるいは「顔/ノリ」を二つ以上持つ、という意識を持つ事です。
 
リーダーシップ鍛錬で、海外ではsituational leadershipという言葉があります。状況に応じた、キャラ設定をしましょう、というような事です。
 
想像力を逞しくする為には、「通常モード」とは別に、「やんちゃモード」を意識して切り替えられるようにする。そっちモードが発令できるように、そっちの頭も時々鍛えておく、というのが現実的にとても有用かと思います。
 
何が起きるか分からない世の中。バランスを取って生きるしかありませんが、その気になれば、頭フル回転させて、鋭い事言えるようにしておくことは、とても有用だと思います。 安定した給与が出る皆さま、知らず知らずのうちに、発想力が錆び付く状況に置かれている事が多いと思いますので、意識されても良いのではないでしょうか。
 
偉そうにすみません。私も、空気読むモードを、もうちょっと鍛えたいと思います。
 
以上

ブラック企業ないし、ホワイトカラーの労働生産性について語ろう

元々働いていたベイン(東京)が、戦略コンサルの中では「ホワイト」なので就職人気になっている中、ベインからワタミに転職した際、「なんていい会社なんだ」と感じた、木村です。
 
ブラック企業」だとか、「ホワイトカラーの生産性」とかについて、いろいろと言われる事が多い中、色々な事に違和感を感じつつも、意見を発信すると角がたったりしそうなので、何も発信してきませんでしたが、いくつか思う所を書きたいと思います(ドキドキ)。
 
概要は、以下の通りです。(これでも、過激なのはなるべく避けていて、本当はもっと思う所ありますが、ブレーキかけてます)
 
・二倍の時間働けば価値はざっくり10倍(だらだらではなく、一分一秒生産性高く過ごす事は前提)。
社会/会社で、「何者か(余人を持って代え難い価値を出す)」には、特に若いうちは、人より多く働く事が殆どの場合不可欠。こういう人材(数より質)こそ、「突破力」が備わるので今、本当は求められている。

・「負けたくないから出来るだけ頑張りたい/せっかくの人生だから最大限なにか成果を出したい」人にブレーキをかけさせるのは愚の骨頂。頑張る自由が担保されない社会なんて、絶対没落する。

・企業のイメージ/ブランド価値が「ブラックレッテッル」で毀損されるリスクが大きすぎるから、「ホワイト対応/ワークライフバランス」バイアスがかかっている構造がある。社会として、wiseに対応すべき。

以下、それぞれのポイントを補足して行きたいと思います

・二倍の時間働けば価値はざっくり10倍(だらだらではなく、一分一秒生産性高く過ごす事は前提)。
社会/会社で、「何者か(余人を持って代え難い価値を出す)」には、特に若いうちは、人より多く働く事が殆どの場合不可欠。こういう人材(数より質)こそ、「突破力」が備わるので今、本当は求められている。

ホワイトカラーの生み出す価値のうち、主なものは、「判断力」です。
 
質の高い判断力を生み出すのは、「思考の幅と深さ」です。
 
思考の幅と深さを生み出すのは、「思考力」x「思考時間」です。
 
より質の高い判断の為には、常に「この仮説は本当に正しいのか」を問い続ける必要があり、一つの仮説が正しいか、正しくないか分かれば、すぐ次の検証しなければならないことが絶えず出てきて、終わりはありません。限られた時間(判断するタイミングまでの時間)に、どこまで走りきれるかのレースのようなものです。
 
もちろん、判断の質を、「チームで」高めて行ったりするのですが、感覚的には数人までなら相乗的にプラスになりますが、10人以上で力を合わせれば深まったりしない訳です。10人以上の会議が生産性上がりにくいのはイメージつくと思います。
 
むしろ、数人で分担するとはいえ、非常に重要な判断、「パッと見、常識的には、Aが妥当そうだけど、ほんとはBなんだ!」というような突破は、やはり「個」の力、説得力、迫力が、経験上大切です。
 
企業の判断の価値、良い判断をするかしないか次第で変わって来る経済価値は、簡単に数十億、時には数千億と変わってきます。
 
だから、「最もよく考えられた、最も説得的な判断」にはすごい価値があり、それ以外(二番手以降)には、殆ど価値が無い、という現実があるのです。
 
判断の質を左右するのは、やはり「個」の力が大切だし、個の力は、「思考力」x「思考時間」で決まってくるので、集中してやりきることで、出せる価値は飛躍的に増えて行くものです。
 
先に、2倍働けば10倍の価値、とざっくり書きましたが、現実はもっとカーブの勾配はキツい感じがします。
そして、今流行っている、「生産性」という観念から言えば、
 
「生産性」=価値/投下時間 
 
とすれば、2倍ぐらい働く方が、ずっと生産性が高い、という現実があると思います。
 
もちろん、ずっと月400時間以上とか働くのは、健康上、精神上もたないでしょうから、オフの時を作ってしっかり休んだり、10年に一度は1−2年ひきこもったりというのは大いにアリだと思います。
 
ただ、現実として、「1ヶ月後にM&Aの入札があるから、それに参加するのか、いくらの入札額で出すのか」みたいなシーンはある訳で、そういうシーンに特に若いうちに貢献する為には、めちゃめちゃ働いて「思考の質」で勝負するぐらいしか手がないのではないか、というのが実感です。
 
もちろん、中年になってくれば、ネットワークを構築したりいろいろ仕事のやりかたは変化してきますが、労働時間と価値の関係が級数的という本質はあまり変わらないと思うのと、
また、若い時に、「突出する」為には、殆どの場合、若いからこその馬力があるので、「思考力」x「思考時間」の、「思考時間」の方を最大化して勝負していかないと、なかなかおじ樣方に感謝される仕事はできないのではないかな、と思います。

・「負けたくないから出来るだけ頑張りたい/せっかくの人生だから最大限なにか成果を出したい」人にブレーキをかけさせるのは愚の骨頂。頑張る自由が担保されない社会なんて、絶対没落する。

書いた通りで、あまり補足は無いのですが、「No残業デー」とかって、場当たり的でボケてるなという感じがします。“ゾーン”に入っている人に走り切ってもらう環境を整える事こそ、企業にとっては欠かせない、最優先取り組み事項であるべきでしょう。
 
「価値」を基軸に、ホワイトカラーの仕事を評価する体制・能力が会社に無いことこそが真の問題であり、伸びる会社は、「価値を評価する眼」と、「頑張る人間に頑張り切らせ、価値を出させ、ちゃんと評価する」体制を必ず具備していると考えます。

・企業のイメージ/ブランド価値が「ブラックレッテッル」で毀損されるリスクが大きすぎるから、「ホワイト対応/ワークライフバランス」バイアスがかかっている構造がある。社会/会社として、wiseに対応すべき。

 
ここが、歯切れが悪くなる/言いたい事を全部直截的に書くのが憚られるので、分かりにくくなるかもしれませんが、書ける範囲で書きます。
 
ネットなどで、「衆愚」的に、ブラックだなんだと祭り上げる動きが、殆どコスト無く、且つその評価基準の正当性や、起きた事とその原因の因果関係についての洞察が、かなり疑わしいにもかかわらず、祭り上げられる企業のダメージは甚大です。
 
ここに、理不尽さと、そういう社会ってどうなの?という懸念と、やりきれなさを強く感じます。
極端な話、「狂言的な」ブラック企業レッテルを貼る動きが生まれたとして、被害を受けた企業が、その動きに対して損害賠償を請求したとしても、働きかけた側の個人やネット住民とかに、絶対そんな支払い原資や受けて立つ立場は無い訳です。
 
そのような状況を踏まえて、冷静にwiseに対応する社会であって欲しいと思います。
そのために、微力ながらこの稿を書いてみました。
 
私の眼には、ワタミは、素敵な人が生き生きと働く環境が沢山ある会社でした。ワタミを退職して独立した人の多くは成功しています。
その事を最後に書いて、おしまいにしたいと思います。
 

トランプさんの勝利にからんで感じた事/考えたコト

激しい事を言い続け、さんざん批判的を受ける形で「バズった」トランプさんが、1対1の大統領選で勝ち切りました。
 
ざわざわしていますが、僕は以下のような事を感じ、考えました。

・ 寛容ってなんだ?
・ ISや日本の多い自殺と底通する、「不幸感」「いらだち」が量産される状況 / 政治家じゃなくビジネスマンがいきなり大統領になるには「洗練されてない事」が鍵なんだな
・ 軍事、経済等への影響
・ 「国家」とは、何だ?

それぞれ行きます。

1) 寛容ってなんだ?

「寛容」って難しいな、とまず思いました。「メキシコと壁を作る。ムスリムを入れない」とトランプさんは言い、それが「非寛容であり得ない!」と批判されています。 その批判、「非寛容」ですよね、と。
 
基本的には白人の国だと思いつつも、その前提の中で、ある程度の「多様性」は我慢するか、と思っていた人達が、素直に「もう我慢ならん」て、言い出した。
これは、ちょっとかっこわるいかもしれないけど、割と素直な主張な感じがする。
 
日本なんて、全然移民受け入れていないどころか、「受け入れます詐欺」みたいなことを、看護、介護の領域とかでやっている訳で、「トランプさん超非寛容〜」とかって言える立場じゃないと思います。
 
僕自身、寛容でありたいと思うし、「自由」はとても大切だと感じるのですが、よく考えると、多くの場合、他人の自由は私の迷惑という状況だったりするわけで、「寛容な社会」「自由な社会」ってなんなのかと改めて考えた時に、よくわからなくなってしまいました。
 
自由と寛容って、なんか近しい感じもするけれど、実は、「自由」を保証する為には、沢山の「これは守り続けるとかこれはダメ、という“譲れないライン”を設定し、それを確保する=脅かす物には非寛容に対応・攻撃する」ということが欠かせないんだなと。
 
日本のなんとなしの、職業選択の自由(法律上ではなく、実質的に仕事が選べる感じがする人が多い状況のこと)とか、パスポートがあれば基本どこにでも行ける自由とかも、つきつめれば、実は、日本の移民政策への非寛容さなどによって保証されている部分もおおきいなと。

ということで、「寛容」とか「自由」って難しいなと思ったのですが、「人権」とかも、「自由・寛容」同等、難しいかもしれません。一定の「人権」を守ろうと思ったら、人口抑制、産む権利抑制が前提、みたいな事、つきつめたらある気がします。

滅入ってくるので、ちょっと目線を空に上げた所、直感的に、「それはさておき、心に余裕が大きい社会」が良いなと思ったので、次の章に行きます。



2) ISや日本の多い自殺と底通する、「不幸感」「いらだち」が量産される状況/政治家じゃなくビジネスマンがいきなり大統領になるには「洗練されてない事」が鍵なんだな

今回のトランプさんの勝利の原因は、一言で言えば、「エスタブリッシュメントむかつく。俺は/私は、不幸だ/先の幸せが見えない。とにかく、今の延長線上ではなく、ぶっこわしてくれ」と思う人が超多く、それがトランプさんに入れた、という事でしょう。
 
要は、「不満、不幸多数社会」な訳です。
 
「社会の閉塞感」これはなんでしょうか?
 
この原因は、まず、「人の仕事が減っている事」と「有名人やスーパーリッチの情報がどうしても簡単に入ってきてしまう事」にあり、
「みんな、社会における“何者か”になりたいんだけど、基本的になれない」という状況にあると思います。
 
工作機械、コンピュータ・スマホ、AIなんだかんだ。これらは、「人間が働く必要ありませんよ、われわれやりますから」というものです。
 
昔、第一次産業革命で「機械打ち壊し運動」ってのがありましたが、全然今日的な課題な訳です。人は、「便利なモノ」に仕事を奪われているのは事実です。
 
「便利なモノ」が出てきたら、楽になるから幸せかといえば、人はすぐに馴れて、益々「めんどくさがり」になるだけで、別に幸せにはあんまりならないわけです。
 
楽になって幸せ、よりも、仕事が無くなって、社会に役割が見いだせなくなってイライラ、の方が強かったりする感じな訳です。スマホもって、携帯ゲームやるけどむなしい!みたいな。(私は、「みんなでいっせいのせで携帯捨てるぞ!みたいなムーブメントがあれば、先陣切って捨てたい!みたいな気持ちが強くあります)
 
一方で、資本主義では、単調な労働が機械に取った変わられると、会社の成功の為に重要なのは、従業員の質/量というよりも、ブランドであったり、資本力であったりと、「益々エスタブリッシュメントが富み、断絶は拡大する」という力学が強くなって行く、、、
 
さあ、どうするか。
 
 
深い問題で、「資本主義」や効率といった枠組みでは解決難しい訳で、、、
宗教なりの出番なんでしょう。。。 「知足」を知ると幸せになる。。。広がるかな?、、、 
さあ、みんな、座禅を組み、知足を腹に落とそう!ってか、、、 うーん
 
ともあれ、ビジネス界出身政治素人の初の大統領像が、トランプさんのような感じというのは驚きました。
 
前回、ロムニー負けましたが、不満な人達から見て、「俺たちと違うエスタブリッシュ」に見えないこと、つまり「お行儀が悪い感じ」が、勝利に結びついた訳です。
 
例えが批判をよびそうですが、日本で言えば、ビートたけしさんが、超お金持ちだけど、そういう感じがしない。
一般の人からみて親近感が持てる。そういうことがこれから政治、選挙で勝つには大切な1要素なんですね、、、
 
しかし、改めてすごいな、大統領を直接選ぶ選挙制度。。。日本がやったらどうなるんだろう。。。強いリーダーでてくるのかな、、、 この制度ついては、本当に重要な課題が早めに突きつけられるという意味で、ちょっとうらやましいなと思いました。 衆愚というのもあるけど、間接民主制であるが故に、wiseな判断がされるという感じはしないから。。。




3) 軍事、経済等への影響

なるべく長くならないように書きますが、トランプさんがキャッチーに言ってきた事(保護貿易的、軍事費負担させる等々)と、本来「共和党」というのはどういう党かというのを重ね合わせてみるのが良いと思います。
 
以前、超優秀なアメリカ人の上司が、アルゴアさんとブッシュJrの時に、どう考えているか聞いたら、「ブッシュJrはどうあれ、共和党は実際的(practical)だから、共和党が勝った方がいい」と迷い無く言っていて、なるほどそうなんだと、ビックリした覚えがあります。

共和党は、軍需産業、それに近い、石油、通信、航空、自動車に強い政党です。だから、「孤立主義」はむしろ民主党のほうがなりそうで、世界の警察まではできないにしても、基本路線権益確保の為には軍事出動を辞さない党なはずです。
トランプさんにしても、敵を国外につくるのは、分断しているアメリカをまとめるためにも、やりたいことです。
 
(一部で、トランプさんになると、アメリカ回帰主義になり、基地撤退とか進めるから、今回の選挙の勝者は中国だみたいな、報道がありますが間違っていると思います。むしろ、ロシア等ども関係修復しつつ、中国には強く出るでしょう)
 
そういう意味では、日本の米軍基地に関しては、負担増は求めるでしょうが、「撤退も辞さないよん」は本音では無いでしょうし、対中国、対北朝鮮には強く臨んで行くと思います。
 
ちなみに、米国基地の負担、コストの75%負担しているんだからいいじゃん/トランプさんが無知なだけというような声も聞かれますが、甘いと思います。
その「コスト」(1兆円ぐらい)というのは、そこにある兵器の開発費とかは含まれていないはずです。米軍が居てくれるのと同じ軍事力を日本が作ろうとしたら、作れないばかりか、ある程度のとこまでいくのにどれだけお金がかかるか。
 
別の言い方をすれば、日本の国防費(〜5兆円)と、米軍基地の負担(7000+億円)、どちらのコスパが優れているか。言うまでもありません。ちなみに、アメリカ軍事費〜50兆、中国〜20兆。
 
そういう意味で、「コスト」はどこからがコストか(ランニングだけでなく、開発費とかもいろいろかかっているぞ)、或は、「そもそもコストベースではなく、価値ベースとして、傭兵だと思ったらこのぐらい払え」的な考え方になれば、支払い増加を求めるロジックはいくらでもあるのです。
3兆払えと言われても、「お願いします!」な状況な訳です。
ということで、負担は増えるでしょうし、日本が出来るのは、「その代わり、こういう状況ではこうするってちゃんと約束して公表して!」ということでしょう。

一方で経済。
 
共和党保護主義的なので、TPPはストップ、又はかなり厳しい局面を迎えるでしょうね。
ちなみに、トランプさんが勝ったことについてどう思うか日本の農家に聞くと、「TPPが流れるからほっとする」みたいな事を言っていますが、私は逆だと思います。
 
TPPが流れたとしましょう。その場合、日本は宿命的に自由貿易を押し進めなければならない国です。
これまで以上に、日本は自由貿易を声高に主張する国にならねばならない、二国間貿易協定とかを進めなければという力学が働くのでは?その中で、農業関連の異様な関税率は、益々交渉上のデメリットとして認識される事でしょう。
 
また、そもそも共和党は、どちらかというとタカ派なので、TPPを「てぬるい」として反対している訳で、根本的には、日本の関税に対してはより強い態度で臨むはずです。
 
ちなみに、米は、カリフォルニアの地下水が足りなくて、アメリカも作れないので、アメリカ的にも日本に売りたいインセンティブは無いので、特例でいけるかなという気がしますが、畜産とか益々しんどいですね。

ということで、「wagyu」は海外で作りましょう。
Doleはトロピカルな感じのブランドですが、Toyotaみたいな、日本のちゃんとしてる感じが匂い立つ食べ物のブランドを作り、海外生産もしましょう!
 
今、オーストラリア人どんどん作ってます、Wagyu made in Australia。

日本企業負けないようにしないと!ホクレンとかマルハニチロとか、アメリカにwagyu生産拠点/ブランドつくったらいいのに。トヨタアメリカで車を作っているように。
 
この章やっぱ長くなりましたが、とりあえず以上。

4) 「国家」とは、何だ?

「自由の国アメリカ」が揺らいだ。
それは間違いないと思う。
アメリカは、「基本白人の国、それが前提」な人と、「人種差別は悪。自由、平等に反する」という人と。分断してしまった。
 
簡単に国境を超えられる現在。
経済活動は、国家と言う枠を超えるのが当たり前な現在。
 
国家ってなんだろうと改めて思いました。
 
ポリシーもいろいろ変わる訳で、そうすると行政的に「いつまでの人はOKだけど、いつ以降はダメ」みたいな、principleもへったくれもないことが起きるでしょう。
 
白洲次郎はいつも、「プリンシプルが無い日本」(日本人の島国だから、なんとなく日本という国家は体をなしているが、背骨がない、、、)と言っていたし、
チェゲバラも60年代?日本を見て、「近代化、経済復興したかもしれないが、日本の魂というのが失われたのではないか」と言っていた。
 
一方で、キング牧師等々、いろいろな歴史を経てきた、「偉大な国アメリカ」が、分断し、プリンシプルを失った感じがする。
プリンシプルとは、アメリカである以上、共有する価値感とか、方向性とか。具体的には、自由と平等ではなかったか。
 
日本だって、なんとなくまじめとか、いろいろあるけど、じゃあ、教育熱心で貯蓄率が高くないと日本人じゃないのか、、、
或は、移民を希望する人に、「こういう価値感とか、能力が無いと日本人にはなれない」っていう一般的なハードルを設定出来るのか(まじめさとか?真摯さとか?義理堅さとか?)、、、
そんなふうに括れる訳ない感じがする。 
 
タックスヘイブンとパーマネントトラベラー、ビットコイン、どでかいMNC(多国籍企業)。
一方で、揺らいでいるけどEU、国連。
いろいろある中で、国家とは、煎じ詰めるとなんだろう?
 
結論めいた事は、僕の想像の範疇を超えるので言えないけれど、先進国には、愛国心とか、「この国である以上、この国民はこうだ」みたいな物は無い。というのは感じる。
北朝鮮や、増してやプーチンの強権を笑う事は出来ないと思う。
 
今を生きる人(特に、若者)は、国ってなんだ?っていう命題に向き合わざるを得ない。 
薄れて行った方がいいのか?強まった方が、居心地いい/都合がいいのか? どうなんだろうか?
 
以上、とりとめなく長いですが、久しぶりなのでお許を
 
おいしいリンゴ、もうすぐ売ります!

蓮舫さんの件に見る、日本の偏狭リスク

蓮舫さんの二重国籍が話題になっている件で思う所がある/議論が偏っている気がするので、私なりの見方を提示したいと思います。
 
党首として、あるいはもっと分かりやすく言えば総理大臣でもいいのですが、「海外の国籍を持っているから信用ならん」ということになるのは妥当性が本当にあるのでしょうか?
 
党首なり、総理大臣として、日本のために貢献出来る人物かどうか、その能力やコミットメントを持って国民が見極めて行けばいい事で、「二重国籍愛国心が無い/信用ならん」は、短絡的過ぎるように思いますし、日本の悪い所である「偏狭さ」が現れている気がします。
 
蓮舫さんはずっと日本の中でコミットされているし、今後責務が大きくなれば、更にそのコミットは上がるのは明らかなのではないでしょうか?
そもそも、選択肢がある中で日本を選んで活動しているということは、逆に言えば、海外移住/国籍取得を考える事も無く日本に居る日本人よりも、「考えた上で選択をしている」訳で、日本へのコミットメントは高いとも言えると思います。
 
国籍の問題は、蓮舫さんの立場に立って考えると、ハーフとして生まれ、そのご両親の国の国籍をわざわざ断ち切って捨てたくもない、というのは自然な心情ではないかと思います。 
 
また、これは蓮舫さんだけの問題ではなく、日本に大きな悪影響がある問題の一環として捉えられます。
このような「偏狭さ」が日本にはびこれば、ハーフの人や外国人から見れば、「日本という国は、ハンデが大き過ぎてリスクだから、日本以外で頑張った方がいいかな」と考えるに至り、日本にとって大きなマイナスになるでしょう。
 
私自身、とある町の行政に関わった時、その責務/権限が大きくなりそうな段階で、「よそ者(町の出身でも、在住でもない奴)だから、ダメだ」というような状況に遭遇し、仕事の質などを見てくれないと感じ、非常に寂しい/残念な思いをした事があります。
 
もう少し広く/長く日本の問題を捉えてみると、やや強引に思われるかもしれませんが、日本国/日本人の弱点として、

1)中間層/オペレーションは強いが、強く優秀なリーダーが出てきにくい
2)自動車等一部の業界を除いて、ガラパゴス化/国際マーケットへの進出の遅れが成長のネックになっている
3)高齢化が進み、移民に頼らざるを得ない/インバウンド観光に期待がかかるが、受入側の国際感覚が乏しい
 
などのポイントがあり、今後日本は益々国際化しなければ進化できないのは自明でしょう。
 
企業のリーダーに何度か外国人のトップが就いた事がありましたが、実際成果を出されている方も、西洋人、在日の韓国人系の方含め沢山おります。
また、オリンパスなどそうだと思いますが、「偏狭さ」が悪い方に出て、大きな機会ロス/停滞につながるような事もあったと感じます。

また、実は、事実として、純粋な日本人(特に富裕層など)でも、結構海外の国籍やパスポートをリスクヘッジの意味もあって持っている人はかなり居ると感じていますし、そういうことは表に出ていないし、プライベートな事なので表に出る必要もないと思います。
 
日本が、偏狭過ぎない国になる事を望みます。
また、蓮舫さんは事業仕分けなど颯爽と切り込んで行ったが、なかなか結果が出るまでには至らず悔しい思いをされたと思います。リベンジを見てみたいと思います。
 
以上、総論的/そもそも論でしたが、「台湾」という僕が好きな国は、更に個別的な歴史的背景があると思います。
 
ご存知の通り、台湾はかつて日本の一部であり、もちろん賛否あるものの、台湾の方々は日本を好意的に捉えており、震災の際の寄付等沢山くれる、そういう国です。
日本が治めていた時に作ったインフラ等、台湾の方が感謝してくれているというような状況を聞くと日本人としては誇らしい/暖かい気持ちにもなります。

その歴史的経緯を踏まえ、「台湾の国籍を捨てない」ことを、日本人が責めることが出来る立場なのでしょうか? 私は、そんな事言えないでしょう、と感じてしまいます。
 
蓮舫さんも、日本が現状「偏狭」なので、思った事その通り言えないのだと思います。 
 
私は蓮舫さん個人も期待したいし、
なにより、日本が偏狭にならず、「日本の為に頑張ってきた/頑張ってくれる人ならいいんじゃない?国籍なんてどこでも。プライベートな事だし。」と思えるように、なって欲しい物だと考えます。
 
以上

都知事選を、歴史の流れから捉えてみた: 本質的論点「小日本主義」vs 「大日本主義」と選挙戦術と  

よく知っている人からは当たり前の内容かもしれないし、素人が書くので素人臭いところもあるかもしれませんが、都知事選について、ちょっと歴史的な事も踏まえて僕なりに捉えている事を書いてみたいと思います。
 
というのは、大切な選挙なのに、いつもくだらないネガティブキャンペーンだったり、ふわっとしたイメージで論点明確にならない選挙になってしまう、あるいは極小化された論点に焦点が当たりすぎるのがとても残念に思いますので。

まず、都知事選挙は、日本においてとても重要な選挙だと思います。その理由を書きます。
 
日本は、戦前なら大政翼賛会、戦後なら自由党民主党保守合同55年体制)と、国政レベルで二大政党制が実質的に行われきませんでした。保守の中で、どの方向性をとるかというのは、自民党内で決まらざるを得ず、選挙で争われにくい。
 
野党は、本当は主張がバラバラなのに、選挙で反自民でまとまってたまに政権をとっても、内実まとまっていないので、うまく政権運営が出来ない、という状況でずっと来た訳です。
良くない状況/政治が健全になりにくい体制がずっとある、と思います。
 
都知事選は、首長選の最高峰で、直接トップを選べるので、「党」というのとは、ちょっと距離をおいて(推薦に留まる)、日本がどういう方向性で進むべきか、が問える選挙だと思うのです。
 
では、日本の政治の最大の論点とは何か。
 
それは、「大日本主義」か「小日本主義」か、ということであったり、基本保守の中でも「タカ派」「ハト派(リベラル)」というところです。
 
ちょっと昔の話になりますが、それが分かりやすい形で提示されたのが、「石橋湛山 vs 岸信介」(1965) のような所だと思います。
 
批判もありましょうが、ざっくり言うと以下のような感じと思います

タカ派
外交:アメリカと近い。靖国は参拝する。軍備化を進める
財政:積極出動する
分権:中央集権
ルーツ:官僚出身が多い
支持団体:宗教含め、ガチガチの固定票含め政治力確保
 
ハト派/リベラル」
外交:隣国全般と融和する。靖国とは距離を置く。護憲
財政:肥大化させない
分権:分権推進
ルーツ:ジャーナリスト、民間出身が多い
支援団体:ガチガチの固定票とは距離をおき、個人の信念重視
 
これこそが、日本の政治の主な論点だと思います。そして、それが有意義な形で争える可能性があるのが、国政選挙より都知事選な感じがします。
 
一方で、自民党、その選挙対策本部の視点から見るとどうなるか。
 
選挙に勝つためには、自民党公認/推薦に組織票を集め、一方で、対抗候補が票を割れば勝てる訳です。極論すれば、勝たせる公認/推薦候補は、個人としてはそんなに強くなく、従順な方がいい。
一方で、対抗候補が浮動票をうまく割る形を作る事こそが、選挙戦術の再重要ポイントであったりする訳です。
 
これまで、この形がしっかり作られ、公示日には自民党推薦候補の勝ちが決まっている、というような都知事選が多かった訳ですが、今回一応、自民党が割れて、野党が統一というところまでは行きました。
 
しかし、状況的に、パッと見、小池さんが改革っぽく見えるようにしているため、浮動票の中で、「改革」を求める人の票が、うまいこと小池さんと鳥越さんで割れるような構造ができつつあります。
 
つまり、なんとなく、「安定運営」の増田さん vs  「改革」の小池さん/鳥越さんというような感じになってきていますし、これが自民党選挙戦術的には狙いでしょう。
 
ただ、上記の、「本質的な論点」での主張で言えば、本当は、増田さん/小池さん vs 鳥越さん だと思います。 
(そういう意味では、鳥越さんの第一声に、後ろに小沢さんが居るのは非常に違和感があったりしますけれど、野党統一の前にはしょうがなかったんでしょう、、、)
 
アメリカもトランプさんが出てきたり、外交の曲がり角にある中、また日本も右肩上がりが終わってだいぶ経っている現在。
 
今回の都知事選で、日本がどういう方向性を定めるべきか、もう一度「本質的論点」を捉えて、国民、都民が考え、直接考えを選挙で示す事が出来るような、そんな有意義な選挙になって欲しいし、それが一つの契機となって、今後「本質的論点」が国政選挙でも争われるような、そんな政治体制になって行くことを望みます。
 
草葉の陰で、石橋湛山さんがどんな風に思っているか、そんなことに思いを馳せながら投票する人、今回何人ぐらい居るのでしょうか、なんてことをふと思い、書いてみました